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江波山気象館 メールマガジン
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2010年 4月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ

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八十八夜とお茶
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 「八十八夜」という言葉をご存知の方も多いと思います。立春から数えて八十八日目をさし、暦の上では、そろそろ春から夏に変わっていく節目となる日でもあります。今年は5月2日が八十八夜、5月5日が立夏にあたります。

 「夏も近づく八十八夜」という歌詞からお茶(日本茶)を連想する方も多いのではないでしょうか。そんなわけで、今回は、「お茶」についての話題を取り上げたいと思います。

 「チャノキ(茶の木)」は、ツバキの仲間の常緑樹で、アジアの南部の亜熱帯地方が原産と言われており、基本的に日本茶も紅茶もウーロン茶も、この「茶の木」を利用して作られています。

 日本には、奈良時代〜平安時代に中国からやってきたようで、本格的に日本各地で栽培されるようになったのは、鎌倉時代末期以降になります。室町時代から安土桃山時代になると千利休に代表されるように、日本独特の「茶の文化」が発達し、江戸時代中期〜後期にかけて煎茶の製造技法が確立してからは日本各地での生産量も飛躍的に増加し、日本を代表する身近な飲み物となりました。

 さて、現在、日本で栽培されている「茶の木」の約8割が、「やぶきた」という品種なのですが、この「やぶきた」は、明治41年に静岡で見つけられた品種(竹やぶの北側で見つかったので、この名前になったそうです)で、煎茶にしたときの品質が高く、栽培しやすいという特徴があったため全国に広まりました。また、全国の「やぶきた」はもともと1本の木(この木は今も静岡県立美術館のそばにあります)からふやしたもので、クローンなのです。なので、ほぼ同じ時期に新芽が出てくるため収穫がしやすいというという利点もあります。

 もともとが、暖かい地方が原産のため、寒さに弱く、遅霜によって、せっかくでた新芽が、霜の害を受けてしまうこともままあります。このため、お茶農家の人たちは、この時期の朝の冷え込みには非常に気を使います。これは、お茶だけでなく、この時期に成長するさまざまな農作物について言えます。気象庁でも、この時期の遅霜の被害を少なくするため霜注意報を出して、注意を呼びかけています。

 高気圧に覆われてよく晴れた日の翌朝には、放射冷却によって、地面近くが冷え込み霜が降りることがあります。このような心配のある日には、地表近くより少し上(6mくらい)の空気の方が気温が高いので、お茶畑では、扇風機(防霜ファンというそうです)を回して霜を防いだり、あらかじめ作っておいた棚に布をかけ作物を覆って保温したりします。

 今年は、3月に低温が続いた上に、4月中旬にも雪や霜による被害がありました。この霜をあまり心配しなくてもよくなるのが、八十八夜をすぎた頃になるのです。お天気ことわざでも、「八十八夜の別れ霜」という言葉がありますから、八十八夜までは、遅霜の危険があることを忘れてはいけない、という意味もあるのでしょう。

 昔から八十八夜に摘み取ったお茶を飲めば無病息災で暮らせる、などといわれるようですが、八十八夜のお茶に限らず、4月上旬から5月中旬に摘み取られる新茶には冬の間に蓄えた栄養が含まれビタミンも豊富なのだそうです。この季節ならではの新茶を飲むときには、お茶農家の人たちの苦労を想像しながら、味わいたいものです。