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江波山気象館 メールマガジン
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2013年 10月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ

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秋の猛暑日、原因は「風炎」?
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 10月に入り夜は涼しく感じる日が多くなりました。しかし日中はまだまだ暑く、10月9日には新潟県糸魚川で10月の国内観測史上初となる35.1℃の猛暑日となりました。糸魚川の10月平均最高気温からは約14℃も高いのです。糸魚川以外でも、周辺の新潟県・富山県の観測地点で10月の最高気温記録を軒並み塗り替えました。どうしてこのような暑さになったのでしょうか?原因は、日本海上で台風24号から変化した温帯低気圧です。
 空気は気圧が低い方へと移動するため、風が低気圧の中心に向かって吹きます。このときには、南の太平洋側の空気が山を越えて日本海側へ移動しました。空気が山の斜面に沿って上昇すると、空気の温度が下がっていきます。温度が下がり続けると、空気に含まれていた水蒸気が凝結して雲ができ、さらに雨が降ります。実際に10月9日には糸魚川から山を挟んだ南側の山のふもとでは、雨が降っていました。
 雨を降らせた空気が山を越え吹き下りると、空気の温度は上昇します。これは、湿った空気よりも乾燥した空気の方が温度変化が大きくなるためです。例えば2000mの山を越えるとき、標高500mで雲ができ雨を降らせたとすると、南側では20℃だった空気は山を越えて乾燥すると27.5℃になります。
 このようにして、乾燥して暖かい空気が流れ込んだ日本海側では、今回のような猛暑日が観測されたのです。特に、新潟県や富山県近くの日本海上に温帯低気圧があったため、空気は日本アルプスなどの標高が高い山を越えることになりました。そのため山を下った空気は非常に乾燥し高温となり、稀にみる暑さとなったのです。
 こういった現象をフェーン現象と言います。フェーン現象はヨーロッパのアルプス山脈の麓にあるフェーンという地方に吹く、乾燥した暖かい局地風が由来となっています。漢字による当て字は気象学者の岡田武松がつけた「風炎(ふうえん)」です。風の炎と言う程ですから、とても暑いことが字から想像できます。フェーン現象が起こった空気は温度が高くなるだけではなく、とても乾燥します。そのため、火災による災害が起きやすく、また、風が吹くために火災の被害も大きくなりがちです。過去にはフェーン現象によって大火事となった地域や、山火事が起きたこともあります。こういった火災が起こりやすい風という意味でも「風炎」という当て字は的を射ています。
 昼夜の気温差が大きい時期です。寒暖差があると紅葉が綺麗に色づいていきます。体調の変化には気を付けつつ、秋を楽しめるといいですね。