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江波山気象館 メールマガジン
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2014年 6月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ

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エルニーニョ現象ってなに?
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 5月下旬にはやけに暑い日が続きました。このまま夏になってしまったら今年はどうなるのかと不安になりましたが、6月4日には中国地方で梅雨入りが発表されました。そして、どうやら今年は冷夏になる予想がでているようです。その原因が「エルニーニョ現象」です。
 エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の真ん中(日付変更線付近)から南米のペルー沿岸にかけての横に広い海域で、海面水温が平年に比べて高い状態が半年から1年程度続く現象です。エルニーニョ現象は数年に一度発生し、日本を含め世界中に影響を与えるため各国で観測が行われています。
 太平洋の赤道域では、通常は貿易風と呼ばれる東風が吹いています。そのため、海面付近の暖かい海水は太平洋の西側に吹き寄せられており、東側では冷たい海水が海面近くに湧き上るようになっています。つまり、海面水温は西部で高く東部で低くなっているのです。ところが、東風が平常時よりも弱くなってしまうことがあります。このときには西部に溜まっていた暖かい海水が東方へ広がってしまうため、太平洋赤道域の中部から東部で海面水温が平常時よりも高くなります。これがエルニーニョ現象です。
 さて、エルニーニョ現象が起こるとなぜ日本で冷夏になるのでしょうか。様々な要因がありますが、ひとつは日本に夏をもたらす太平洋高気圧の張り出しが関係します。太平洋高気圧の原点は熱帯域西部(フィリピン付近)の大気対流です。海面水温の高いフィリピン付近では気温が高く海面からの蒸発も盛んなため、高温の空気が上昇し北上して中緯度地域で下降します。すると、その場所は周囲と比べて高気圧となり、太平洋高気圧となるのです。夏になると気温が上がって上昇する空気がさらに多くなり、結果として太平洋高気圧の勢力が大きくなるため日本まで張り出してくるのです。
 エルニーニョ現象が発生すると、通常はフィリピン付近で活発な大気の対流が東へずれます。すると、フィリピン付近の大気の対流が弱まるため、日本付近への太平洋高気圧の張り出しが弱まります。こうして日本は冷夏となるのです。
 また、エルニーニョ現象は一年近く続く長期間な現象のため、夏以外にも様々な影響を及ぼします。例えば、梅雨は全国的に平年よりも梅雨明けが遅くなる傾向があります。冬には西高東低の気圧配置が弱まるため、暖冬となる傾向があります。このように、エルニーニョ現象を観測することで長期予報に利用できるのです。
 私たちにとっては遠い場所の変化ですが、日本にも大きな影響があります。エルニーニョ現象に限らず、その他の世界の異常気象にも一度目を向けてみてはいかがでしょうか。