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江波山気象館 メールマガジン
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2016年 4月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ

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広島市江波山気象館から
気象に関するさまざまな情報をお届けします。
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風の強さ〜藤田スケール〜
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 気象庁では、2016年4月1日より、激しい突風の強さを把握するために用いていた「藤田スケール」をより精度のよいものにするため、「日本版改良藤田スケール」を策定し使用を開始しました。「藤田スケール」とは一体どのようなものなのか、紹介したいと思います。
 竜巻などの激しい突風をもたらす現象は、主に発達した積乱雲の下で発生します。大気現象としては狭い範囲で生じる現象のため、風速計が設置されていないところで発生すると、風速を観測することができません。また、たとえ風速計が設置されているところに竜巻が生じたとしても、観測機器が破壊されてしまうことも考えられます。そこで、1971年にシカゴ大学の藤田哲也博士(1920-1998)が、その被害の状況から風速を大まかに推定する「藤田スケール(Fスケール)」を考案しました。例えば、テレビのアンテナなどが倒れた、屋根瓦が飛んだ、自動車が吹き飛ばされた、といった被害状況から風速を推定します。
 藤田博士はアメリカの竜巻被害を現地調査から解析し、竜巻のさまざまなメカニズムを解明しました。実は、広島と長崎の原爆の被害調査をしたこともあり、爆風からどのような被害が出たのか現地調査を行った経験が竜巻研究にも役立っています。また、1975年6月にニューヨークで起こった航空機事故が積乱雲による下降気流によるものだと突き止め、この現象を「ダウンバースト」とした名付け親でもあります。この航空機事故以降、アメリカでは風向・風速の急変を探知するため、空港気象ドップラーレーダーを主要空港に設置するようになりました。日本でも1995年に関西国際空港に空港気象ドップラーレーダーを設置し、現在では全国主要空港9か所で観測を行い、航空事故の防止に役立てています。
 「藤田スケール」はアメリカや日本だけでなく世界で広く使われています。しかし、アメリカで考案されたもののため、日本の建築物などの被害にあまり対応していないことや、大まかな風速しかわからないなどの課題がありました。そうした中、気象庁では2012年5月に茨城県つくば市などで発生した竜巻の被害を受けて、最新の風工学をもとに改良した「日本版改良藤田スケール(JEFスケール)」を定めて使用することとしました。
 さて、日本版改良藤田スケールですが、突風による被害状況から風速を推定するという過程は、従来の藤田スケールと同じです。しかし、従来の被害の指標は住家やビニールハウスなどの9種類でしたが、改良版では住家の種類を木造・鉄筋などに細分化したり、自動販売機や墓石などの日本でより身近な物を指標として加えたりしています。その指標となるものの被害がどの程度だったか(被害度)から風速を求めるようになったため、従来の藤田スケールよりも推定される風速の幅が狭くなり、精度が高くなりました。例えば、自動販売機が横転した場合には風速約35m/s(3秒間の平均)の突風が吹いたと推定します。茨城県つくば市の竜巻では、住家の損壊などの被害状況から風速約80m/sと推定されました。
 日本では平均して年間に25個程度の竜巻が確認されています。気象庁では、竜巻等の激しい突風に関する気象情報として、竜巻注意情報を発表しています。観測機器が充実してきたとはいえ、竜巻が発生する狭い範囲を正確に予測するのは簡単ではないようです。現在竜巻注意情報は気象台の担当地域(概ね一つの県)を対象に都道府県単位で発表されることから、もしも自分の住んでいる地域に竜巻注意情報が発表されたら、まずは空を見て、発達した積乱雲が近づいてきていないか確認することが大切です。真っ黒い雲が近づいてきて、雷が発生し大粒の雨やひょうが降りだしたら、まさにその場所で竜巻が発生する可能性があります。頑丈な建物内に移動するなどして、早めの安全確保をするよう心がけてください。

日本版改良藤田(JEF)スケールとは
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-2-2.html
竜巻から身を守るには
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado4-3.html
竜巻から身を守るために「竜巻注意情報」をご活用ください
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/200805/5.html