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江波山気象館 メールマガジン
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2017年 8月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ

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広島市江波山気象館から
気象に関するさまざまな情報をお届けします。
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記録に残らない最高気温
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 今月6日、広島ではこの夏一番の暑さとなり、最高気温37.0℃を記録しました。日本で過去最も高い気温となったのは、高知県江川崎で観測された最高気温41.0℃です(2013年8月12日)。ニュースに取り上げられたこともあり、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。
 しかし、統計上気象庁の正式な記録にはなっていませんが、実は41.0℃を越える最高気温を観測したことがあります。1923年9月2日の東京での記録、46.4℃です。この記録は関東大震災が原因です。
 1923年9月1日11時58分、マグニチュード7.9と推定される大きな地震が関東を襲いました。昼食時で各家庭や飲食店で火を使用していたため、地震発生直後から各地で火災が発生して燃え広がり、9月3日10時頃まで約46時間にわたって燃え続けました。地震が起こる前の1922年には約35万棟あった建物のうち、約21万棟が焼失したとのことです。
 中央気象台(現気象庁)も火災に巻き込まれています。木造二階建ての気象台は、地震の揺れにより壁に亀裂が生じ、屋根瓦が崩れ落ち、観測機器が倒れて壊れ、柱が折れ建物が傾くなどの被害がありました。そのような状況の中、夕方18時ごろ火の粉が屋根に飛び移り始めました。職員が何度も消し止めていましたが、23時ごろには炎が上がって燃え広がり、気象台の大半を焼失してしまいます。焼失を免れたのは、鉄筋コンクリート造りの風力塔や図書庫などごくわずかです。観測機器や重要書類などは火災の前に運びだしていたものもあり、失わずに済んだ資料も多いです。
 このような状況の中でも、気温の観測が行われていました。余震が起こり、近くで火の手が上がっている中、当時の観測当番は観測を続けました。そのため、中央気象台があった東京元衛町(現在の千代田区)の気温や気圧、風速など欠けることなく記録されています。おかげで、火災のため1日の夜から2日にかけて気温が上がり、2日1時の観測では45.2℃、そして最高気温46.4℃にまで上昇したことを知ることができるのです。大火災という特殊な条件下での観測のため、公式の統計記録には入っていませんが、当時の火災被害の大きさと職員の方の気象観測に対する熱意が伝わる貴重な記録です。
 関東大震災が発生した9月1日は防災の日です。学校や職場などでは防災訓練を行うところも多いのではないでしょうか。地震防災のみならず、台風が多くなる夏の終わりの時期でもあるので、改めて防災意識を高める機会としてみてください。