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江波山気象館 メールマガジン
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2018年 3月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ

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広島市江波山気象館から
気象に関するさまざまな情報をお届けします。
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梅が咲き、桜が咲く
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 江波山気象館が建つ江波山公園内には様々な植物が生育しています。その中でも、冬から春への移り変わりを感じさせてくれるのが梅です。先月末には気象館そばの広場にある梅が開花し、公園を白やピンクに彩りました。3月末から4月にかけては、梅と入れ替わるように桜が咲き始めます。
 気象庁では、梅や桜をはじめ様々な植物について開花などの現象を観測しています。今回はそんな梅と桜についてのお話です。
 梅には白色の梅と赤〜ピンク色の梅があります。気象庁で観測しているのは白い梅で、標準木に5〜6輪の花が咲いた状態になった最初の日が開花日です。今年、広島の梅の開花日は2月25日でした。開花日平年値(1981年〜2010年)は2月6日ですので、比較すると平年より19日遅い開花となりました。
 桜の観測には主にソメイヨシノが用いられ、ソメイヨシノが生育しない地域では、エゾヤマザクラ(北海道北部)やヒカンザクラ(沖縄・奄美地方)が観測に用いられます。梅と同じく、標準木に5〜6輪の花が咲いた状態になった最初の日が開花日です。広島での開花日の平年値は3月27日ですので、平年値で比べると梅が咲いてから2か月弱遅れて開花するようです。冬の終わりの花が梅、春の始まりの花が桜という印象です。
 ところが、北の地域では少し様子が異なります。開花日平年値を比較してみると、梅が最も遅く咲くのは北海道の室蘭で、その開花日平年値は5月4日です。桜の開花日平年値は5月6日ですので、梅と桜がほとんど同時に咲きます。どちらも待ちわびた春の花という印象ではないでしょうか。
 梅はバラ科サクラ属に分類され、桜の仲間です。そのため、開花するプロセスも桜と同じです。花が散ると、夏の終わりにかけて花芽をつくります。しかし、秋以降は「休眠」に入り活動を休止します。秋から冬の低温を受けることで休眠から目覚め(休眠打破)、気温の上昇とともに開花が促されます。
 梅も桜も冬の低温によって休眠から目覚めますが、その後開花を促すために必要な気温が異なります。梅は桜に比べ、気温が低い状況においても開花が促されるため、日中の暖かさなどによって花芽が成長します。そのため、広島を始め多くの地域では冬の終わりごろに梅が先に咲き始めます。
 一方で、室蘭などの地域では4月頃まで厳しい寒さが続くため、梅は休眠から目覚めているものの、開花は促されません。また、厳しい寒さが続くことで、桜の開花できる気温が下がると考えられています。そのため、梅と桜の開花を促す気温の差が小さくなり、春になり気温が一気に上昇するとほぼ同時期に咲くことになるようです。
 また、梅は桜よりも冬の気温の影響を受けやすく、年によって咲く時期が1〜2か月ずれることもあります。例えば、今年の梅の開花日によると、鳥取や福井では昨年と今年の開花のずれは56日にもなっています(鳥取:2017年1月5日と2018年3月2日、福井:2017年1月10日と2018年3月7日)。気温以外にも日照時間や土壌の水分などによって、同じ公園にある木でも開花時期がずれたりもします。
 広島では3月22日に桜が開花しました。すでに梅は散ってしまっている場所も多いかもしれませんが、これから桜以外にも様々な春の花が次第に咲き始めます。お住まいの地域それぞれの冬から春への移り変わりを植物で感じてみてください。

気象庁 生物季節観測の情報
http://www.data.jma.go.jp/sakura/data/index.html
森林総合研究所 多摩森林科学園 サクラに関するQ&A
https://www.ffpri.affrc.go.jp/tmk/info/faq.html