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江波山気象館 メールマガジン
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2018年 9月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ

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広島市江波山気象館から
気象に関するさまざまな情報をお届けします。
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台風による高潮
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 大型で非常に強い台風24号が接近しています。今日の夕方以降、四国から紀伊半島に上陸する可能性が高くなっています。台風の接近に伴い、広島県でも非常に強い風が吹き激しい雨が降り、波が高くなるおそれがあります。土砂災害、浸水害、河川の増水や氾濫、暴風、高波などに注意が必要です。
 今月4日にも台風21号が上陸(4日12時ごろ徳島県南部に上陸、14時ごろに兵庫県神戸市に再上陸)、近畿地方を横断し、四国や近畿地方では猛烈な雨や風によって大きな被害となりました。大阪府田尻町関空島(関西国際空港)では最大瞬間風速58.1m/s、和歌山県和歌山では57.4m/sを記録しました。関空島については、それまでの観測値1位の記録の41.2m/sを大きく超える値となりました。
 雨、風による直接的な被害以外にもう一つ台風21号がもたらした現象があります。それが高潮です。それぞれの潮位を標高で表すと、大阪では329cm(14時18分)、和歌山県御坊では316cm(12時48分)という潮位を観測しました。過去の観測データをもとに計算した天文潮位と比較すると、大阪は277cm、御坊は260cmも潮位が高くなりました。このため、関西国際空港など様々な場所で冠水する被害が起こりました。
 どうしてこのような高潮が起こったのでしょうか。高潮は、台風や低気圧によって海面が上昇する現象です。高潮が起こる原因には主に「吸い上げ効果」と「吹き寄せ効果」の2つがあります。
 「吸い上げ効果」は、気圧が下がることで起こる現象です。気圧が低いと空気が海面を押す力が弱くなるため、海面が吸い上げられるように上昇します。具体的には、気圧が1hPa(ヘクトパスカル)下がると水位は約1cm上昇します。台風や低気圧の中心になるほど気圧が低いため、吸い上げる効果は大きくなります。
 9月4日大阪の最低気圧は962.4hPa(13時57分)です。前日のほぼ同時刻である3日14時の観測値は1006.5hPaですので、約24時間で44.1hPa下がっており、つまり気圧の影響によって24時間で約44cm水位が上昇したことになります。
 「吹き寄せ効果」は、沖から岸に向かって風が吹くことによって、海水が岸に寄せられて水位が上昇する現象です。この効果は、風速が速く、水深が浅く、同じ方向の風が吹く距離が長いほど水位が上昇し、中でも風速に大きく影響を受けます。今回の台風21号で顕著な高潮となった原因には、過去の記録を塗り替えるような非常に強い風が吹いたことが大きく影響したようです。
 台風が接近した際に、風が強くなる理由として、台風の進路と位置が大きく関係しています。台風の進路に対して東側または南側に当たる地域では、台風そのものの風に加えて台風を動かす風が重なり、より風が強くなります。
 広島でも過去に大きな高潮を経験しています。1991年9月27日の台風19号、別名「りんご台風」によるものです。広島では22時25分に潮位291cmを観測しています(標高での表記)。このとき、広島は台風の進路に対して東側に位置していたため、風が強まり、最大瞬間風速58.9m/sを記録しました。高潮や強風により宮島の厳島神社の能舞台などが倒壊するなど、様々な被害がありました。
 現在(9月30日12:00現在)、広島県をはじめ西日本の広い範囲に暴風、波浪警報、大雨警報(土砂災害)が発表されています。台風が接近したとき、大雨や強風はもちろんですが、お住いの地域によっては高潮や土砂災害、河川の氾濫など、それぞれの地形に起因する自然現象が起こることがあります。テレビやラジオ等から最新の気象情報を入手し状況の把握、そして備えることが必要です。

※本文中の潮位は全て潮位表基準面からの高さではなく標高での高さで比較しています。