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江波山気象館 メールマガジン
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2008年 9月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ

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秋の七草
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 まもなく10月。いよいよ秋も本番ですね。
皆さんは「秋の七草」をご存知でしょうか。
万葉集を代表する歌人、山上憶良が次のような二首の歌を読んで以来、秋を代表する草花として「秋の七草」と親しまれるようになりました。

 「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花」
 (あきののに さきたるはなを およびおり かきかずふれば ななくさのはな)

 「萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」
 (はぎのはな おばなくずはな なでしこのはな おみなえし またふじばかま 
  あさがおのはな)

 この秋の七草、現在の名前に置き換えると、
萩=ヤマハギ、尾花=ススキ、葛=クズ、なでしこ=カワラナデシコ、女郎花=オミナエシ、藤=フジバカマ、朝顔=キキョウ
となります。

 ここで、朝顔=キキョウ?と思われる方もいるかもしれません。現在では朝顔=アサガオですが、このアサガオ、平安時代初期に遣唐使により日本に渡ってきたといわれています。

 また朝顔がムクゲを指す場合もあるそうですがムクゲも中国原産で平安時代に日本に渡ってきたといわれており、平安時代の漢和辞典「新撰字鏡」(892年頃)には「桔梗、二八月採根暴干、阿佐加保」という表記があることから、アサガオ・ムクゲとも山上憶良が生きた奈良時代に野に咲いていたとは考えにくく、この山上憶良の詠んだ朝顔はキキョウではないでしょうか。

 ちなみに日本最古の本草書(今の薬用植物事典・918年頃)である「本草和名」には「牽牛花(アサガオのこと)、和名阿佐加保」との記述があり、このころに朝顔の指す植物がキキョウからアサガオに変化してきたのかもしれません。

 さて、この「秋の七草」。日本を代表する秋の花として古くから親しまれてきましたが、皆さんは野生の「秋の七草」を全部見たことがありますか?

 ヤマハギ・ススキ・クズは身近に見ることができますが、カワラナデシコは岩手県・埼玉県・宮崎県・鹿児島県などでレッドデータブック(絶滅のおそれのある野生生物について記載した本)に載っていますし、オミナエシもめっきり見かけなくなってきました。フジバカマ・キキョウにいたっては環境省のレッドデータブックに載っており全国的に数が少なくなってきています。

 このめっきり見ることが少なくなってきたカワラナデシコ・オミナエシ・フジバカマ・キキョウには共通の特徴があります。

 実は、日当たりの良い手入れされた草地が好きなのです。ですから人間の生活の場に近いところにたくさん生え、よく目にするので「秋を代表する草花」になったのでしょう。
 ところが、近年開発などによって草地が減少したために、都市部では「秋の七草」を全部見るのは難しくなってきたようです。